インドネシアで作られているアタ製品とは?原材料や歴史やお手入れについても詳しく紹介

アタ製品

春夏ファッションに欠かせないカゴバッグや、ちょっとした小物入れ・ティッシュボックスまで、私達の生活の中にたくさんのカゴがあります。おしゃれなカフェでは、キッチンアイテムにアタ雑貨が使われているので、身近に感じられるようになりました


バリ島のお土産としても人気があるので、ご友人から頂いて使っている方もいるかもしれません。今回は、おしゃれと実用性を兼ねたアタの魅力を深掘りしていきたいと思います。カゴ好き、アジアン雑貨好きな方にアタの素晴らしさを伝えるための参考情報となりましたら幸いです。

インドネシアの伝統雑貨アタとは?

インドネシアには300もの民族が共存し、それぞれの生活や文化を尊重して過ごしています。インドネシアの豊かな文化が息づくのが伝統工芸品です。アタのカゴ細工は、湿気に強いため、湿度が高い日本でも衛生的に使えるとお土産でも人気があります。また、非常に丈夫にできていますので、簡単なメンテナンスをすることで長く大切に使えます。

このように、アタは伝統工芸品としてだけではなく、おしゃれを楽しむアイテムとしても世界中の人達から愛されているのです。そんなインドネシアの伝統工芸品アタについて、さらに詳しくご紹介します

作られている場所

人気のバッグやカゴなどを中心にオーダーメイドをしているのが、主にアタ発祥の地と言われているトゥガナン村です。ここで作られているアタは揃った美しい編み目が特徴として挙げられ、古くからアタ雑貨の製作が盛んだったこともあり職人の技が代々受け継がれています。

職人魂を感じさせる素晴らしい技術力で、繊細なアタ雑貨はトゥガナン村の職人でなければ作れません。その分、少し高価な雑貨が多いのですが、それだけの価値が十分にある仕上がりです。



原材料について

インドネシア語で「アトゥ(草)」とも呼ばれている、シダ科の植物です。インドネシアに自生する植物でバリ島などでも見かけることが多いようです。

栽培が難しいため、自生するアタはインドネシア全体の貴重な資源となっています。世界的に人気が高まっていますが、取れるアタの量は決まっているために値段が高騰し、雑貨やカゴなどが高額で取引されたり、品不足になったりしています。

収穫したアタの葉には棘があり、これをきれいに取り除き茎の部分を乾燥させたものを使います。乾燥後に4〜8等分に裂いて紐状にしたものを使って雑貨が作られています。

アタで作ったカゴやバッグはナチュラルな色と風合のバランスが良くおしゃれです。根の部分は乾燥すると黒くなるので模様部分に使われるなど、貴重なアタは余すことなく製品に使用されています。

カゴの雑貨が多いのでラタン「籐」と比較されやすいアタですが、ラタンは主に東南アジアのジャングルに自生しており、中国やフィリピンなどでも作られていることもありアタよりも安く流通しています。

ラタンよりもアタの方が細くしなりがあるので、仕上がりまでに時間がかかり職人が丁寧に手作業で作ることからも、インドネシア雑貨でも高級品として扱われています。


アタ製品のグレード

アタ雑貨は職人の手作業で作られていますので仕上がりに差がでます。目の細かさや均一感、丁寧に編まれているのかでグレードが分けられます。これからアタ製品のグレードを超高品質、高品質、通常の品質の3つに分けて紹介します。

超高品質と言われているアタ製品の特徴は、一本のアタの太さが0.3mm〜0.5mmと腕利き職人しか作れない繊細な仕上がりです。丁寧に時間をかけて作られるので、値段も高い製品です。ほとんど流通はありませんが、特注製品として展示されることがあり、その時に見ることはできます。一般的に流通している通常の品質の約4倍の時間をかけて作られています。

高品質と言われているアタ製品は、アタの太さが0.6mm〜0.8mmで流通が少ない貴重な雑貨です。インドネシア雑貨専門店でも見かけることが少なく、ハイブランドや品質の高い海外雑貨を扱う店で取り扱われます。バッグやカゴなど1つ1つ見ても、細やかで美しくしっかりした作りが魅力です。こちらは通常の品質の約2倍の時間をかけて作られます。

一般的なインドネシア雑貨店やバリ島のお土産店で取り扱われているのが、通常の品質と言われているグレードのアタ製品です。アタの太さが約1mm程度と超高品質や高品質と比較すると、ややがっしりした印象に見えます。



歴史について

バリ島と聞くとヒンドゥー教をイメージする人も多いでしょう。独特な文化はヒンドゥー教がもたらしたものでアタ雑貨発祥にも深く関わっています。

ヒンドゥー教や仏教がバリ島に伝えられたのが約5世紀前半と言われています。古来、バリ島に土着していた宗教が上手く混ざりあい、バリ島ならではのヒンドゥー教ができあがりました。

バリ・ヒンドゥー教は教義ではなく慣習を重んじています。そして、宗教に基づいた儀式を行うための組織「バンジャール」があり、住む場所によって構成されています。

このバンジャールによって、すべての儀式が行われるのですが、バリ島のトゥガナン村もその1つで、古くから途絶えることなく儀式が続けられています。その中の1つである「ウサバ サンバ」は、パンダンの葉の剣とアタで作られた盾を持った男性が戦いを繰り広げる儀式です。

この盾がアタ製品の発祥と言われており、宗教的文化で使われていたアタが伝統工芸品として今に受け継がれているのです。

※諸説あります



アタ製品の製造工程

アタ製品は、大切に使えば100年以上使用できると言われているほどに強固な作りになっています。それは、アタの伝統技術をこれまで守ってきた職人の丁寧な仕事によって守られているのです。

インドネシアの伝統工芸であるアタ雑貨はどのような工程で作られるのか、その製造工程をご紹介します。

編む

乾燥後に裂かれたアタは、太さが均一になるように整えられていきます。瓶のキャップに均一な穴を開け、そこにアタを通しながら整えられているようです。機械などは一切使わず、身近にあるものを利用しながら作られていくアタ雑貨の姿は、先人の知恵と現代人の情熱によって支えられています。

編み物というと「編み針」使ったものを想像しますが、アタは一目一目が手作業で「ゲージ」や「デザイン図」などはありません。すべては職人の頭の中で考えられた形を再現していくという、原始的ですが根気の必要な作業です。形や型に決まりがないので職人が思うままにデザインを考えて作られています。

流通しているアタ製品は、すべてオーダーメイドになりますのでサイズやデザインを伝えた上で作られています。乾燥したアタは引っ張っても切れないようにしっかり硬く編まれています。アタが、硬くしっかりと編み込まれた細工は丈夫で型崩れもしにくくなっています。正に職人技です。


アタ製品を編む工程


乾燥させる

仕上がったあとには天日で5日間ほど乾燥させます。バリの日差しはカリッとして強いので、長く乾燥させることで網目が引き締まり丈夫になっていきます。雨季に入ると乾燥に時間がかかってしまい、アタ雑貨の仕上がりが遅れてしまいますが、その間も職人の手が休むことはありません。


アタ製品を乾燥させる工程


スモーク

乾燥後にスモークさせることで完成に近づいていきます。スモークに使うのはココナッツの木片と実を砕いたものをチップにして約3日間火を絶やさずに燻されます。燻加減が難しいために3時間おきに火加減を確認するそうです。

湿度の高い日本でもカビの心配がなく使える理由はこのスモークにありました。スモークはアタ雑貨を美しい飴色にするだけでなく防虫・防カビ効果もあるそうです。


アタ製品を燻す工程


仕上げ

スモーク後には、細かな煤をブラシや布で落としていきます。また、ささくれなどはカットして磨き上げることで完成します。


完成

完成したアタ雑貨は、すべて手作りですので同じように見えても唯一無二のアタ製品です。職人の思いや、現地の風土などがカゴやバッグ1つ1つに込められているので、細かい網目やゆがみも味となっていきます。

大切に使うことで長く持ち続けられますので、正しいお手入れ方法を学んで大切に使いましょう。



お手入れ方法

アタ雑貨は、乾燥後にココナッツチップで燻していますので独特な香りがあります。使い始めは強く香りますが、使っているうちに香りは飛んでしまうので、気にせず使い続けてください。

どうしても香りが強く感じるのであれば、水で濡らしたタオルを強く絞って、サッと拭いてください。その後は、しっかり乾燥させて使いましょう。

また、バリ島と日本では日差しの強さが違いますので完全に乾燥するまで時間がかかります。中途半端に乾燥させるとカビの原因となりますので軽く拭いた後にはしっかり干して香りを飛ばすようにしてください。

普段のお手入れは、やわらかめのブラシなどでほこりを落とすだけで十分です。

カゴやバッグなどでアタのささくれが出たら、小さなハサミでカットし透明なマニキュアを塗れば目立たなくなります。

水をかけたり洗ってしまったりすると、スモークした美しい飴色が落ちてしまいますし、破損に繋がります。水を使う時には短時間で手早く終わらせるのがコツです。



まとめ

今ではアタ製品を作れる職人も減少気味ですが、雑貨の需要は高くなっています。職人の手作業で作られるアタ雑貨は決して安価ではありませんが、一度使うと不思議な魅力に取りつかれてしまいます。

アタ雑貨を使うことで、バリ島の空気や伝統を感じられるだけでなく、伝統工芸の素晴らしさを体感できます。アタ製品は和室にもしっくりと馴染みますし、カゴバッグは和装にも似合います。アタ雑貨をぜひ生活の一部として取り入れてみてください。